2009年6月21日日曜日

マルクスは生きている(平凡社新書)


不破哲三著

前の共産党議長だった、不破さんの書いた本。マルクスについて書いた本が本屋さんのコーナーの一部に何冊かまとまっていたが、ぜんぜん知らない人が書いたものよりは良いか、と思って購入。

私はマルクス自体に興味はあって、何冊か本も読んだ覚えがある。大学時代には「マルクス経済学」という土曜日にやってる授業に出ていた覚えもある。しかし何故か殆どその核心部分を覚えていない(教授の余談は覚えている)。その意味で比較的簡単に纏められたこの本は私向きの本だったかもしれない。

マルクスは資本主義社会に於いて労働者が搾取されるのは資本家(経営者)の善意とか悪意によるものではなく、「資本主義」が労働者を搾取することを資本家に強制するのだ、という。利潤第一主義で考えていけば、労働者に対する賃金の支払いは最小限にすることが当然のはず。

生産者が利潤第一主義を徹底することが、即ち労働者が困窮しやすい状況であることになる。消費者側から見ると、消費者というのは殆どが労働者なわけで、この生産と消費の関係は矛盾がある。

そう単純に考えていいものかどうかわからないが、確かに最近陥ってる傾向はこんな感じのような気もする。実際に経営者に「お前の会社の社員は消費者でもあるんだからもっと休みをやって、給料を上げてやれ」というのは現実的ではない、というのは想像できる。どこかで線を引くのは政府の仕事、ということで社会主義的な考え方、というのがわかったような気になる。

マルクスは資本主義が斃れ、共産主義・社会主義(この2つはマルクスにとっては同じ意味らしい、レーニンは区別したそうだ)の時代が来るのは100年も前のことと考えていたようだが、今こそその時が近づいてるんじゃないか、というのが不破さんの期待のようでした。

未来については、「労働者が長時間労働から解放され、自由な時間を使って自分の肉体的精神的な開発をし、能力を発揮する」云々は現実から離れすぎてる感じがあるし、エンゲルスの書に「人間は歴史を自分で計画的に作るようになる」なんて話もあるんですが、それはちょっと怖いような気もする。

決してこの本の評価は低くないですが、次マルクスについて読むときは日本共産党関係者じゃない人の本にしよう、とちょっと思いました。

0 件のコメント:

コメントを投稿