2009年6月14日日曜日

告白(双葉社)

湊かなえ著


売れてる本だから、と言って、買って読むような習慣はないんですが、ちょっとした外圧から読むことになりました。まあ賛否両論ありそうな本だ、という予備知識はあって読み始めました。

ある中学校で起きた事件について、関わった人達が章ごとに一人称で「告白」していくというものです。非常に読みやすく、決して読むスピードの速くない私もすぐに読み終わりました。

しかし、後味は悪い。何故悪いのか?
各登場人物の行動が陰鬱すぎる。告白した結果起こす行動が反社会的で奇異過ぎて、その行動についての設定に無理があり、説明不足になっているところもいくつもある。結果奇行に奇行を重ねて最後はなんだかよくわからない。全部夢だった、とかにしてくれた方が良かったんじゃないの、と思ったくらいでした。

今、読み終わって少し考えてみるとこの本は、「何故社会には『裁判』という制度が必要なのか」、ということが言いたいだけの本なんじゃないかと思いついた。そうなら後味が悪いのは当然。第二章で「告白」してる人が中で述べていて、読み終わって納得したのはこの部分だけだった。

このくらいの引用は良いでしょう。

--どんな残忍な犯罪者に対しても、裁判は必要なのではないか、と思うのです。それは決して、犯罪者のためにではありません。裁判は、世の中の凡人を勘違いさせ、暴走させるのを食い止めるために必要だと思うのです。--

裁判が加害者、被害者どっちのために必要なのかは別な議論が必要かと思いますが、この部分は真実でしょう。この本の出発点はある犯罪行為なんですが、それを被害者側が警察に訴えなかった(裁判にしなかった)ことが全ての登場人物の陰鬱な行動を引き起こしていく、と考えると簡単に納得できます。

そう思うと決して全体として低く評価すべき本ではないのかもしれません。それでも少々設定に無理があるとは思いますが。

個人的にこの本について後味が悪いのは別な理由もあるんですが、それを書き始めると私自身の「告白」になってしまいそうなんでやめておきます。

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