2020年3月29日日曜日

読書:一茶



一茶

藤沢周平 著



「一茶」は題名の通り、藤沢周平が小林一茶の生涯を描いた本である。藤沢周平の小説の中では、実在の個人を題材にした「歴史小説」に分類される。藤沢周平は自分で語っているが、ある時代を舞台に創作する「時代小説」と、実際の歴史に沿って描かれる「歴史小説」を明確に区別していたようである。個人的に藤沢周平の面白さはどちらかというと「時代小説」の方が活きていて、「歴史小説」の方はややしゃちこばり過ぎている印象を受けることがある。「歴史小説」である「一茶」のもその藤沢周平の緊張感は感じるのだが、小林一茶自体の人生の興味深さもあってか、読みやすく面白い本だった。

小林一茶の生涯に関しては、Wikipedia にも詳しく書かれているように、かなり本人が書き残したものを含めて資料も多いようで、それはこの小説にも当然踏まえられている。その中で藤沢周平が著わす意味で興味深いのは、一茶と同じように田舎から東京に出て身を立てようとした藤沢周平本人が小林一茶の心情をどう捉えているかという部分であると思う。一茶を題材に小説を書こうと思った時点で何らかの共感は持っていたものと思われる。


個人的に「小林一茶」というと最初に思い出すのは

よごれネコそれでも妻はもちにけり

という一句で、これはサザエさんに題材にされている。波平が猫を見てこの句を吟じていると、マスオとカツオがチャチャをいれて、最終的にカツオが

ひのえうまそれでもヨメにゆきにけり

という句を披露して波平に「やかましい一茶の句だッ!!」と怒鳴られるという四コママンガである(このマンガは手元では朝日新聞社版の31巻に掲載されていたが、その後も色々出ているようなので、変わっているかもしれない)。

一茶は齢50を過ぎるまで、経済的な理由で妻帯することができず、そのことを気に病んでいたことを知ると、子供の頃から慣れ親しんでいるこの句の意味も深まってくる。下らないようなことではあるが、個人的にはこうした「ヨコ」の繋がりのようなものを発見するのが、最近の読書の大きな楽しみになっている。




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