2009年7月5日日曜日

自殺する種子(平凡社新書)


安田節子著

たまにはこんな本も良かろうということで選んで見ました。「巨大アグロバイオ企業(農業関連生命工学)企業が遺伝子工学を駆使して云々」という紹介がついてますが、その話を中心に市場経済の話から、有機農業の話まで広範囲に語られています。確かに全体を見ていかないと見えてこない話だと思いました。

農家が来期蒔くための種子をどう確保するか、ということについて日本では自分の収穫物の中から種を残しておく「自家増殖」はあまり多くないそうです。しかしなんとなくですが、農業の基本はその「自家増殖」のような気もします。アメリカで「自家増殖」を続けていて、全く身に覚えの無い農家が「お前の畑はうちの特許を侵害している」と訴えられた、という事件があったそうです。企業がその農家の農作物を勝手に調べて、自分のところで遺伝子組み換えで作った作物を作っていると言って訴えたということのようです。他に550件同じような訴えをやっていて殆ど農家側の予算の都合で示談になってるが、シュマイザーさんという農家の方が裁判を戦って「シュマイザー裁判」として有名になっています。結局最高裁まで言ってシュマイザーさんはなんと敗訴したそうです。

訴えずとも絶対に自分のところから来期も種子を買わせよう、というのが「自殺する種子」で、当然実にはなるが二回目の発芽の時には毒が回って発芽しないようになっているとか。

確かに種屋の側から一方的に考えたら折角一生懸命開発したものを毎年自分で蒔かれたら困るわけで、それを防ぎたい気持ちはわかります。しかし、それを言い始めたらそもそも種を売るという商売の不安定さはおそらく昔からあるのではないでしょうか?そこに「遺伝子組み換え」という技術と、「特許」という政府のお墨付きが与えられたことでアグロバイオ企業が必要以上に力を持った存在になってしまっている、ということでしょうか。

もちろん米国内にもこうしたことを規制する動きもあるようですが、アグロバイオ企業はアメリカ社会の中で大きな力を持っているのは確かです。当然こうした話が日本に押し付けられてくるのがいつものパターンです。日本の大豆の自給率は既に5%しかないそうで、食用の80%は米国産だそうです。で、その米国産の大豆の91%は遺伝子組み換えされたものだそうで、つまり「日本の食用の大豆の72%は遺伝子組み換え」だそうです、ちょっと突っ込みどころがありそうな気もしますがそういうことだそうです。

言わずと知れたことですが日本の食料自給率は27%しかありません。かつてCIA筋からは「食料は米国にとっての最終兵器である」という報告もあったそうで、これは意図的にそういう状態にさせられている、と見るのが正しい見方でしょう。農作物の輸入拡大が散々求められているのも「日本の車を海外に売るため」ということで納得させられてきた気もしますが、ことはそう単純ではないはずです。日本の政府とマスコミは、余程アメリカから利益を得てるようで、恐ろしいほどアメリカ政府に従順です。アメリカがいつ「最終兵器」を使うつもりなのかはわかりませんが、すでに十分準備は整っている、というところなのでしょうか。

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