2018年12月7日金曜日

Windows 10対応のクアルコム製Snapdragon 8cxチップがインテルのPC支配を終わらせることになるかもしれない


新しい「Snapdragon 8cx Compute Platform」が重要なのは、これがクアルコムによってPC用に一から設計されたものであり、常時起動し常時ネット接続されているデバイスに特化して設計されていることだ。


Mashable
RAYMOND WONG
Dec 6 2018

クアルコムのSnapdragonチップはモバイルデバイス市場を支配していて、殆ど全てのアンドロイド搭載のスマートフォンやタブレットに採用されている。そして今彼らはインテルの主戦場であるPC市場に侵攻しようとしている。

年に一度開催されるスナップドラゴン・テクノロジー・サミットの3日目に、世界最大のモバイルチップメーカーであるクアルコムはSnapdragon 8cx system-on-achip(SoC)を公開した。これは7nmプロセスで製造されていて、iPhone XS/XS Max/XRとiPad proに使われているAppleのチップであるA12及びA12Xに近いものだ。

クアルコムはSnapdragon 835及び850チップで既にPCでの動作をテストしていたが、今回は完全にインテルの牙城を射程に捉えたと言って良い。これがインテルがこれまでがっちりと握ってきたPC市場における支配権の座の終わりの始まりになる可能性は充分ある。

この新しい「Snapdragon 8cx Compute Platform(公称)」が重要なのは、これがクアルコムによってPC用に一から設計されたものであり、薄くて軽いラップトップやタブレットとしても使える2in1デバイスといった、常時起動し常時ネット接続されているデバイスに特化して設計されていることだ。

このチップはクアルコムがモバイル用に過去に作ってきたチップ及び次世代のチップ(Snapdragon 855)と製造技術を多くの部分で共有しているが、この8cxチップは多くの要素、機能についてよりPCに求められるものに応える設計になっている。

例えばラップトップはより多いピクセル数のより大きなスクリーンを持っているので、クアルコムは2台の4K HDRディスプレイへの出力に対応した大きなGPU、Adreno 680を組み込んでいる(このGPUは新しい855チップに搭載されるAdreno 640も凌駕するものだ)。

8cxに搭載されるCPU、Kryo 495は8コアで優れたマルチタスク性能と大容量のキャッシュを備えている。これはPCのユーザーはアンドロイドのタブレットのユーザーよりも、多くのアプリケーションを起動したままにするし、多くのChromeのタブを同時に開くことになるからだ。クアルコムは8cxチップについて、性能は15ワットで動作するインテルのUシリーズ(DellのXPS 13に搭載されている)に匹敵するもので、7ワットで動作するインテルのYシリーズを搭載したAppleの新型MacBook Airよりも3倍高速だと話している。

8cxチップはCPUとGPUでより高い性能を発揮した上で電力消費は更に効率化されているという。Snapdragon 8cxでは、Windows 10はSnapdragon 850チップの倍の速さ、825の3.5倍の速さで動作する上に電力消費が60%効率化されている。

他には16GBまでのLPDDR4x、2133MHzメモリに対応し、ストレージとしてSSDのNVMe接続にも対応していることはPCのパワーユーザーの要求に確実に応えるものである。また、このチップは第2世代のUSB-C 3.1に対応しているが、インテルが開発したThunderbolt 3には対応していない。


モバイルデバイスの強みでPCを強化する


しかし、インテルの性能に対して小型でファンレス(インテルは7nm製造プロセスに苦労している)であることだけがクアルコムの優位性ではない。Snapdragonアーキテクチャは持ち運び、ワイヤレスで使われるライフスタイルを前提に設計されている。

8cxが動作するラップトップはインテル製チップで動作するマシンよりもバッテリーが長持ちすることになる。また、8cxは急速充電規格Quick Charge 4+に対応している。クアルコムによれば8xcを搭載したPCは「数日間」のバッテリーライフを持つという。

X24 LTEモデムが統合されていることで携帯電話網への常時接続が可能になる。スマートフォンやタブレットには携帯電話網への接続機構が内蔵されて久しいがラップトップにはやっと搭載され始めたところである。インテル製のチップがLTEモデムに対応してこなかった理由の1つはバッテリーの消費が激しいことがある。しかしクアルコムがモバイル分野でLTEモデムを同じシリコンに統合させてきた技術がこれを可能にした。

同様にクアルコムのAqsticオーディオ技術は高品質のワイヤレスオーディオが利用できるようになり、アレクサやコルタナのような音声コマンド認識も改善される。


インテルの市場を喰うことになるか


インテルは数十年間PC用プロセッサーの揺るぎない支配者だったが、終わりの時が近づいてきているのかもしれない。クアルコムがモバイル分野でしてきた仕事は私たちの生活、仕事、遊びを一変させてきた。モバイルデバイスを変化させてチップメーカとして得てきた知見をPCに持ち込もうとしている。同社にとってインテルの支配を揺るがす大きなチャンスがある。もしインテルが消費電力と性能を効率化させたチップを供給することが出来なければクアルコムがすることになる。

しかしクアルコムはモバイルデバイス用チップの技術を擁してインテルに圧力をかけようとしている唯一の存在ではない。Appleがインテル製のチップから離れてMacBookを自前のAシリーズチップで可動させようとしているという噂は広く伝えられている。何年か前ならインテルから離れることは笑い話だったかもしれないが、現在のインテルは未来の技術動向から乗り遅れ始めているように見える。

AppleのA12X Bionicのようなモバイル用のチップは15インチのMacBook Proの性能に匹敵するもので、Appleが将来的により高性能で高効率のチップを持つようになればインテルと完全に袂を分かつ機会を得ることになる。Windows PC市場の場合はすぐにインテルを切り捨てることはないだろうがクアルコムの8cxやその後継チップは更に無視できない存在になることは確実だ。

インテルはコーナーに追い詰められている。クアルコムとAppleのチップがモバイルデバイスに革新をもたらしたことで、インテルはモバイル市場での革命を既に逃してしまい、次世代の持ち運び用ラップトップと2in1デバイス市場も逃すことになるかもしれない。インテルがすぐに何かしら劇的な手が打てなければ、超ハイエンドマシンを除く市場で出来ることがなくなってしまうかもしれない。

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